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分身主義詩集‥‥もくじ


オルゴール風のBGMをお楽しみください。

MUSIC by Little Valleyさん(曲名・ほたる)


初めまして
僕は‥‥ 
僕よ、もう泣かないで
今やっと戻ってきました
大きな大きな粘土 
宇宙
僕の声を探してください
恋人たちの現象
分身主義者の日常 
人間‥‥驕り高ぶらされていくもの

今日はバジュゴリ語で 
謹啓、米大統領様
君は恋人
新しい日常
これからの話をしませんか?
 
これってなあに!?

(*画像は、Silverry moon light さん、Atelier N さん、Tin Moon さんから使わせていただきました。どれも繊細でとても美しいイラストです。イラストは詩と関連あるものを集めたつもりですが、その関係性を発見していただく中にも、詩的なものが隠れています。
元々、言葉の役目も、類似したイメージに関連づけをして、互いにつなぎ合わせることです。詩とは、関係性の発見から生まれる美や意外性を共感し合う喜びです)


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初めまして


聞こえますか 僕の声
今とても小さな声で
アリさんや雑草や小石にしか
聞こえないくらいの
小さな小さな声で
あなたに呼びかけています

僕の声に耳を澄ましてください
森に迷い込んだあなたが
木や土や落ち葉や
落ち葉に隠れた小さな虫たちの声や
光や風の声に耳を澄ますように

僕は言葉
形は そう あなたが今目にしている
大体そんな形のものです

今日から僕とあなたは ただならぬ関係です
僕に小さな声で話しかけてくださいね
タンポポの綿毛のベッドの中で まだ眠りの中にいる
水滴さんを起こさないくらいの声で
この宇宙のあるがままの姿だけを伝える
真実の言葉だけで話しかけてくださいね

僕は‥‥言葉
そして あなたは‥‥言葉
真実の言葉
変幻自在の脳の幻想



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僕は‥‥


僕は‥‥
わかんないことはワカンナイと言えますが いやなことは
あんまりイヤとは言えません
自分を表現しようとすると体が硬直し 本番に弱いです

えみりちゃんは小学一年です
自由で いやなことはイヤと言います
わかんないことは ワカンナイと言います
自己表現も豊かで本番に強いです
僕の心は 小学一年のえみりちゃんを ねたみます


僕は‥‥
感性が豊かで涙もろいですが 表現は下手くそです
人生には不器用で変な執着心があります
上手に甘えることができません
楽しくは遊べますが あんまり元気とはいえません

翔平くんは小学四年です
感性が豊かで オーバーに表現します
なんでも器用にこなし 執着心があまりありません
上手に甘えます
いつも楽しく遊びます
やたら元気に走ります
僕の心は 小学四年の翔平くんを うらやみます


僕は‥‥
真面目ですから 森川のおじちゃん(*1)から石を渡されたら
ありがとうございます と言えそうですが
うまく みんなに調子を合わせられないこともあります

翔梧くんは小学三年です
真面目で おじちゃんから石を渡されるたびに 
ありがとうございます と言います
本心を上手に隠します みんなに調子を合わせてくれます
ときどき ものすごく嬉しそうに笑います
僕の心は 小学三年の翔梧くんに ひがみます


えみりちゃんや翔平くんや翔梧くんを
ねたんだりうらやんだりひがんだりする僕が
とても悲しいです

だけど僕はすごい魔法を知りました!

えみりちゃんや翔平くんや翔梧くんに笑顔をもらえたとき
えみりちゃんや翔平くんや翔梧くんの笑顔はサラサラに溶けて
僕の体の中に入ってくる
サラサラ サラサラ 音楽のように入ってくる

僕の笑顔はサラサラに溶けて
この宇宙に広がる 
サラサラ サラサラ 音楽のように広がる
そのとき 僕は宇宙に広がる笑顔になる
宇宙をつつむ笑顔になる

(*1 森川のおじちゃんは、テレビにも何度も出演している水きり名人で、
 『分身主義宣言!』 の表紙のイラストも描いてくださった方です)




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僕よ、もう泣かないで


突然の夕立のような泣き声
見ると道路を隔てた向こう側
若い母親の三歩ほど後ろのところで
子供の頃の僕が泣いている
彼の足は
アスファルトに張り付いてしまった
世界がめちゃめちゃに壊れてしまったのだ
もう歩くどころではないのだ
泣き声はますます激しい夕立

若い母親は振り返り
黙って子供の頃の僕を見ている
叱りもせず
なだめもせず
途方にくれもせず
母親は知っているのだ
子供の世界が壊れやすいことを

ソフトクリームがポロッと落ちた日にゃあ
日本が海に沈没したかのように泣く

デパートで母親とはぐれてしまった日にゃあ
母親の乗ってる飛行機が急降下で
墜落してしまったかのように泣く

友達の家の窓ガラスを
誤って割ってしまった日にゃあ
死んでおわびをしなきゃ
いけないかのように泣く

母親を激しく怒らせてしまった日にゃあ
飼っていた金魚を死なしてしまうような
取り返しのつかない大失敗を
してしまったかのように泣く

ちょっとしたことが
生きるか死ぬかの一大事で
家中の窓という窓や
御飯を食べるお膳やら食器やらが
こなごなになり
たんすや棚や
屋根や天井や床や
壁という壁がぶっ倒れて
世界の終わりが来て
泣き出す

若い母親はそれを知っていて
見計らっていたのだ

しばらくして
絶妙のタイミングで
子供の頃の僕に近づき
そっくり抱き上げて
左側へ歩き出す
夕立はピタリとやんだ
彼の世界はいとも簡単に修復されたようだ

僕はホッと胸をなでおろし
道路のこちら側を
右側に歩き出す

さあ
もう大人になった僕よ
僕の道を行こう
僕という生を生きるしかない
苦しみと悲しみの中を

その苦しみと悲しみを
生きさせていただけたチャンスに感謝して
今、喜びの中を行こう

僕という分身の生を生きさせていただける喜びの中を生き
違う分身の生を生きさせていただける喜びのために死んで行こう

僕はもう
どんなにこの世界が壊れようとも
そっくり修復してくださる腕があることを
知っているから

だから大人になった僕よ、もう泣かないで
今、感謝の中を行こう



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今やっと戻ってきました


その脳はたった今
人を殺してきました
長く続いた泥沼の中の夢に
とどめを刺しました

泥から這い出したその脳は
ドブドブと粘りつく足跡を
点々と残しながら
今この部屋にたどりつきました。



その脳はたった今
歓喜の曲を完成させました
太陽に伸ばした震える手で
今少しの光を切り取りました

光を切り取ったその脳は
太陽の色に染められた
両手を掲げて
今この部屋に入ってきました。



その脳は誰の持ち物でもありません
その脳は誰の持ち物でもありません



あなたやあなたやあなたの落とした
夢の断片を拾い集め拾い集めしながら
やっとわたしたちの部屋に
たどり着いたその脳たちに
わたしたちは
誰の持ち物でもないこの地球から獲れた
コップ一杯のぶどう酒を
さしだしましょう

ぶどう酒色に染まった脳は
わたしたちのこの部屋から
もうはぐれることはないでしょう
もうどこへも行くことはないでしょう
もうあてもなくさまようことはないでしょう



わたしたちの落とした夢の断片を
拾い集め拾い集め
やっと今わたしたちの部屋に
戻ってきたのですから。



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大きな大きな粘土


宇宙という名の大きな大きな透明な粘土がありました

その大きな大きな透明な粘土の中でひしめき合って小さな小さな天体ができました
自分の周りをギューと押し広げて、自分をギューと固めて
でも外から見たらただの大きな大きな透明な粘土

その大きな大きな透明な粘土の中でひしめき合って小さな小さな人間ができました
自分の周りをギューと押し広げて、自分をギューと固めて
でも外から見たらただの大きな大きな透明な粘土

あなたという部分は言いました
わたしは人間というものです
鉱物でも動物でも植物でもありません
わたしであってあなたでもありません
でも外から見たらただの大きな大きな透明な粘土

宇宙という名の大きな大きな透明な粘土は
その内部では何かとひしめき合ってギューギューやっているようですが
内部の密度が変化しているだけのようで
物質が変化したわけでもなく形が変化したわけでもなく
いつでも外から見たらただの大きな大きな透明な粘土

宇宙という名の大きな大きな透明な粘土は
自分の中のあなたという密度の濃くなった小さな小さな透明な部分に問いかけます
「あなたはわたしです‥‥よね?」
あなたという密度の濃くなった小さな小さな透明な部分は
宇宙という名の大きな大きな透明な粘土に答えます
「わたしは鉱物でも動物でも植物でもなく人間です
でも わたしはまちがいなくあなたですよ‥‥ねっ!」

宇宙という名の大きな大きな透明な粘土はやっと自分を知りました
やっと安心して眠ることができます
その全身を大きな大きな宇宙にプーとふくらましたり
あなたくらいに小さく小さくキューとちぢめたり
ダイナミックな呼吸をしながら
可愛い寝息をたてながら
きれいな夢(*2)を見ながら

(*2 分身主義で言う夢とは→こちら



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宇宙


宇宙を描きなさい と先生に言われて
生徒は画用紙を真っ黒に塗りつぶし
なぐさめ程度に白い点々を描き
外へ遊びに行ってしまった

宇宙を描けと言った 先生も先生だが
真っ黒に塗りつぶした生徒も生徒だ

その先生は100点をつけるだろうか?
生徒の絵に

生徒は遊ぶだろうか?
宇宙の中で



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僕の声を探してください


誰か僕の声を探してください!
僕は自分の声を忘れてしまったんです!

‥‥お前の声はこんな声かい?

違います 違います!
(僕は首を振って、声でない声で叫ぶ)
僕の声はそんな、砂利道を歩くような、そんな声ではありません!

‥‥あなたの声はこんな声かしら?

違います 違います!
僕の声はそんな、茨 (いばら) でくすぐるような、そんな声ではありません!


‥‥じゃあ、お前は自分の声を本当に知っていたのかい?
‥‥じゃあ、あなたは今まで本当に自分の声で話していたのかしら?


たぶん‥‥、
いや、確かに僕は自分の声でしゃべっていました!
その声を発する身体もここに存在しています!
声を忘れてしまったせいで、今ではもぬけの殻のような身体になってしまったんです!

‥‥それはお前の思いすごしさ、お前は最初から声など持っていなかったし、お前の身体は元からもぬけさ
‥‥そうよ、あなたの思い込みよ、あなたは未だかつて自分の声でしゃべったことなんて一度だったなかったはずよ


じゃあ、僕が今まで語っていた言葉は誰の声だったんですか!?
僕はまちがいなく自分の声で語っていたんです!
ああこのままじゃ、頭が変になりそうだ!
確実に存在している僕の身体がバラバラになってしまいそうだ!
誰か、誰か、誰か、ああ誰か早く僕の声を探してください!

その時、一斉に叫ぶ声が聞こえてきました
僕の声も!
あたしの声も!
俺の声も!
あたいの声も!
ついでにおいらの声も!
Oh, my voice, too!
それじゃあmeもね!
拙者の声も頼もう!
それがしの声も!
わしのも頼む!
我が輩のも!
小生も!
あちきのも!

それらの声が何億何兆と重なり
共鳴し合い
大きな大きな唸りとなり
宇宙空間を揺るがし
天体をはじき
銀河を超高速回転させて
ついに 僕の耳が悲鳴をあげそうになった瞬間‥‥

ふわっ‥‥と
すり抜けて
静寂が僕を包んだのです
光の三原色が混ざり合って透明な光になるように


声という声が消えた そのとき
宇宙の静寂の中に残された
微小な振動‥‥

指先からそっと伝わるかすかなふるえは
僕の体の芯をつらぬき
それまで閉じられていた心の目から
ハラハラと
いつまでもふるえながら落ちる
透明な喜び

目を閉じて
あなたも感じてください
あなたの声の源泉を

僕たちは今日から
もう自分の声を探す必要はありません

宇宙の彼方の共通の源泉から湧き出ている
小さな小さな振動が
大河をどこまでも下り
僕たちの体にたどり着き
その小さな体を振動させて
空気を振動させて届いていたもの

それが僕の声
それがあなたの声

今 僕たちは
自分の声を探しあてました



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恋人たちの現象


‥‥宇宙は無から生まれた!

全裸の女に左手で腕枕をしている男は話し始めた

‥‥無からたった一つの 「方向性」 が生まれた!
‥‥もっとも、無というのも 「方向性」 だけが存在するところから生まれたんだけどね、ハハハ


天井には蛍光塗料を塗った星が散りばめられている
昼間 星座表を手にした女の指示を仰ぎながら
男が椅子を踏み台にして
一つ一つていねいに貼ったカシオペアや
オリオンや南の十字星や北斗七星などだった


‥‥無のエネルギーがインフレーションを起こし、宇宙は一気に
ビッグバンという超高温の状態に突入し、膨張スピードが
加速される中で単純な原子がうまれ、やがていたるところに
原子のかたまりができ、星や銀河ができ、
やがて地球ができ、そして僕たち人間ができ、
つまり、僕たち人間は、宇宙が今もものすごいスピードで膨張
をしている中で生まれている一つの現象に過ぎないんだ!


そこまでを一気にしゃべると 右手で煙草を探し
火をつけた

女は
男の左腕をレールにして半回転して男の裸の胸に鼻を押し当てた
男の匂いと心臓の鼓動を感じた

‥‥じゃあ、今の私たちも現象なの?

‥‥そう、ビッグバンが生んだ、たった一つの方向性の作る現象の一つ!

男は
闇の中に浮かぶカシオペアやオリオンや南の十字星や北斗七星などを
満足げに眺めながら煙草を二回ほどふかし
左手におわん型を作り、まだ火照りの残った現象を逃さぬように
ぴたりと蓋をした
男の手は正確にその大きさのおわん型を作ることができた

‥‥でも現象であることを知覚した僕は

‥‥現象の外にいることだけは確かだ


男が一番聞いて欲しかった最後の言葉を
もう女は聞いていなかった
女の腕は曲げられたまま男の胸に力なく乗せられていた
女の呼吸に合わせ現象が呼吸をしていた

男はもう一度煙草をゆっくりと吸い
静かに吐き出すと
火を消し
頭の上の明かりを消し
深く目を閉じた

暗闇の中で蛍光塗料の星々が
恋人たちの現象を見下ろしていた

そのもっと上の
ずっとずっと遠くの暗闇では
本物のカシオペアやオリオンや南の十字星や北斗七星が
現象の外に飛び出した男の現象を見下ろしていた



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分身主義者の日常


お金の価値観を作り出す
人間関係を作っている
家族や企業や国といった枠を決める
特許を必要とするが変わるので

従軍慰安婦問題や
北朝鮮の拉致問題や
世界各地で起きている遺恨を引きずった紛争問題や
学校で出される試験問題や
過去の歴史の意味が変わるでしょう

政治家の発言が
評論家の発言が
僕やあなたの発言が
変わるでしょう

知らない大人に声をかけられたら大声を出す訓練や
暴れたり逃げたりする訓練を子どもにさせる
信じられない教育を考え出す
変わっていくでしょう

自分たちの老後のことばかり考える
官僚の
変わっていくでしょう

人類の
笑顔で挨拶をする
ゴミを捨てない
変わっていくでしょう



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人間‥‥驕り高ぶらされていくもの


人間‥‥この驕り高ぶったものは
たった1個の受精卵から生まれた

たった1個の受精卵はビッグバンの作った方向性によって
2個 4個 8個 16個と分裂を繰り返させられ
30兆個になった時
光の中に産み落とされる

そして60兆個の細胞に分裂させられる間に
脳という 勘違いを専門とする物体が
形作られていく

脳という 勘違いを専門とする物体は
60兆個の細胞に分裂したにもかかわらず
自分を1個の人間と呼ぶ
人間とは‥‥分裂することで1個の存在となる不可解なるもの

1個の人間は1個の人間の
命を崇拝し
命を尊重し
命を守るような
驕り高ぶる存在にさせられていく


人間がまだ
受精卵だった頃
1匹の単細胞生物や
一本の木や一本の草とも分裂せず
この宇宙とも分裂していなかった
人間とは‥‥1個になることで分裂してしまう不可解なるもの

命は宇宙のもの
たとえ命のために命を奪うとも
それをさせるのは人間の意志ではなく
宇宙からの光の束が
脳のスクリーンに浮かび上がらせている幻影
人間に行動を起こさせる幻影

いつしか人間の脳は
それを自分の意志だと勘違いし始めたので
命を崇拝し
命を尊重し
命を守るような
鼻持ちならない存在になった
だから脳は‥‥命を軽視したり
命を侮蔑したりもする

人間がまだ
受精卵だった頃
彼はまだ宇宙そのものだったから
彼はまだ1個でも分裂でもなかった

彼はまだ宇宙そのものだった



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命とは
人間のように動くもの
ただ人間のように動くもの

この宇宙の中では
天体が爆発して地球を作ったり
地球に風が吹いて木をなぎ倒しては
火を起こしたり
地球に雨を降らせ川を増水させては
地形を変化させたり
常にとどまることなく動きつづけているが
それは
人間のように動いているのではないから
命とは呼ばないらしい

その代わり
あたかも人間のような動きを感じさせるものも
命と呼ばれることもあるらしい

命とは
人間が勝手に自分を見本にして名づけているものらしいが
人間は
この宇宙の中では
風や木や火や雨や川や地形のように
常に動かされているだけのものだから
人間のように動かされているだけの
風や木や火や雨や川や地形も
命と呼んでもいいんだろう

命‥‥
それは死んだり生きたりするものじゃなく
動く もの

ビッグバンの一撃によって動かされている
全てのもの
ビッグバンの影響がなくなるその時まで
決して止まることのない
その 動き のこと
(今の僕らは死体さえも動きを止めないことを知っている)



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今日はバジュゴリ語で


あなたに、一つだけ質問させてください。
何か一つでも、他の何ものにも影響されず、刺激もされず、まったくのあなたの自発的な意志で、まったくのあなたの独創で、まったくのあなたの発案で、今までに何かをしゃべったりやったりしたことがありますか?

この世に生をなしたのは、もちろんあなたの意志でも独創でも発案でもありません。
日本語を作ったのはあなたではないし、それを使うようになったのも、もちろんあなたの意志でも独創でも発案でもありません。
あなたは家庭で、あるいは学校か会社で、「よーし、今日はバジュゴリ語でしゃべるぞ!」という自発的な意志や、独創や、発案で、いきなり流暢なバジュゴリ語でしゃべり出したことは一度たりともありません。
あなたが何かを考える時、バジュゴリ語で考えたりしません。
あなたが何かを考える時に使う日本語の文法は、あなたの決めたものではありません。
あなたのしゃべる意見は、あなたの意志でも独創でも発案でもなく、テレビや新聞や雑誌や会社や学校や家や、いろいろなところでやりとりされる意見を、切り張りしてコラージュさせられているようなものです。

僕が日本に生まれ日本に住んでいることも、日本語の文法を使って日本語をしゃべることも、僕の独創ではありません。
僕は自発的な意志で、他の何ものにも影響されずバジュゴリ語でしゃべり出したり、バジュゴリ語で考えたりしてみせることはできません。
僕が日本語を作ったのでもないし、これを使いたいと選択したわけではありません。
この世に生をなしたのさえ、僕の意志でも独創でも発案でもありません。

だから僕が偉そうにしゃべってきた意見は、僕の意志でも独創でも発案でもなく、テレビや新聞や雑誌や会社や学校や家や、いろいろなところでやりとりされる言葉を、切り張りしてコラージュさせられたようなものです。
僕が偉そうにやるボランティアも、僕が誰かの体や心を傷つけることも、僕がおしっこすることやあくびをすることも、僕がサッカーをやることも、僕が芸術作品を作ることも、僕の意志でも独創でも発案でもなく、僕の脳を取り巻く環境に支配された僕の脳が、僕の行動を支配したものです。

義務教育も、お葬式も、結婚式も、あなたの独創でも発案でもありません。
義務教育や、お葬式や、結婚式などを作った人たちも、彼らの独創でも発案でもなく、いろいろなもののコラージュを作らされただけです。
大きくなって、ある仕事を選択したあなたも、その仕事はあなたの作ったものではありません。
もしあなたが作った新しい職業でも、それは今までの職業を切り張りしてコラージュさせられたようなものです。
あなたの行なった 「ある仕事を選択する」 という行動も、あなたの意志や独創や発案で動いた行動ではありません。
ある人を好きになったとしても、その人はあなたが作ったわけでなく、好きになるという感情も、その人を抱きしめる行動も、あなたが世界で初めて創案したわけではありません。

バジュゴリ語という単語は、たった今僕が創案した単語ですが、ジュというあらかじめ存在するカタカナをコラージュさせられただけのものです。

だから、あなたに一つだけお願いさせてください。

どうか 「いまだかつて私は、何ものにもよらず自分の意志でもって、平和を願う気持ちを持ったり、平和の抗議行動をしたり、何かを発言したことはありません。私の意志は、私の脳を取り巻く環境に作られているだけのものです」 と認めてください。
自分の自発的な意志にも、独創にも、発案にもよらず、認めさせられてください。

つながるために‥‥。
宇宙のあらゆるものとつながった僕たちが、
世界を平和にする、正しい行いだけをさせられるために‥‥。
自分の自発的な意志にも、独創にも、発案にもよらずに‥‥。



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謹啓、米大統領様



     謹啓、
                        米大統領様

現在、あなた様は地球上で自他共に認める最高の権力とやらを勝ち得た方だと存じ上げます。
もし私が米大統領をやってくれと頼まれたら、何兆ドル積まれようと辞退申し上げますから、それをなさっていらっしゃるあなた様はきっと私とは全く違う環境で育ってこられたのですね。
まさに米大統領になるための環境で。
環境があなた様のお姿や性格や顔かたちを作られたように、環境があなた様の脳を米大統領になるように支配なされて、その脳にあなた様は支配されたのですね。
まさに米大統領になるべき行動を取るように。
米大統領として生きるしかない、今のあなた様の悲しみと苦しみと喜びをお察し致します。
私は、私として生きるしかない悲しみと苦しみと喜びを生きておりますから。

ちなみに私は完全無欠の分身主義者を目指している者でございます。
分身主義者とは例えばこのように考えるものです。

ご存知のように、私たちの体の細胞は、髪の毛でも皮膚でも心臓でも胃でも脳でも、どれも全く同じDNAを持っています。
一人の人間のDNAはどの細胞のものを取り出しても同じ情報が書き込まれているのですが、その置かれた環境によってその中の必要な情報だけが読み取られ、かたや髪の毛の細胞になり、かたや皮膚の細胞になり、かたや心臓の細胞になり、かたや胃の細胞になり、かたや脳の細胞になるわけです。
皮膚の細胞を作っていたDNAも、置かれた環境さえ整えば、子供を作る立派な生殖細胞になれます。(*3)
つまり、分身主義者とは、私もあなた様も、土も花も月も地球も天体も、みんな同じ情報を持ったDNAが、違う環境に置かれていることで違う発現をしているだけだと考えるものです。。


科学的に言えば、この宇宙を構成している最小単位である素粒子がくっついて原子や分子となり、それが、その環境によって違う組み合わされ方をしてできたものが、かたや天体であり、かたや花であり、かたや人間の姿であるということです。
あなた様の環境で育った私が米大統領になっていて、私の環境で育ったあなた様が分身主義者を目指す私になっていて、犯罪者の環境で育った私やあなた様が犯罪者になっているのです。
ああ、そうでした。分身主義は 「遺伝」 も環境に含めるということも、言い忘れてはいけない大事なことでした。

さて、私とはまったく違う環境で育ってこられたあなた様ですから、その意味で分身主義者を目指す私と致しましては、自分の分身であるあなた様をとても誇りに思っております。
あなた様がこの世界をお照らしになる雄々しい太陽なら、私は地の中の可愛らしいモグラです。
(私は子供の頃、地上に迷い出てしまったモグラを手のひらに抱きしめたことがありますが、本当におとなしくて可愛い動物です)


そんな私から、まだ分身主義者を目指そうとされていないあなた様に一つだけ質問させてください。
あなた様が米大統領になろうと意識した頃のことを思い出してください。
あなた様は、他の何ものにも影響されず、刺激もされず、まったくのあなた様の自発的な意志で、まったくのあなた様の独創で、まったくのあなた様の発案で、米大統領になろうとお考えになられたのですか?
あなた様が米大統領になることができたのは、純粋なあなた様だけのお力だと言えるものは、ほんの1パーセントでもありましたか?
あなた様は、バジュゴリ語を話したり、バジュゴリ語で何かを考えたりできますか?

あなた様は世界を平和にしようと尽力されていらっしゃいますよね。
あなた様こそ、常に全世界をリードされている、この地球上で最も視野の広い方ですから‥‥。
とても素晴らしいことだと存じます。

僭越ではございますが、そんなあなた様を見込んで、世界を平和にする一番の近道を提案させていただきたいと思います。
それは、あなた様が世界中の誰よりも率先して次のように宣言なさることです。

いまだかつて私は、他の何ものにもよらず自分の意志でもって、米大統領になろうとしたことはありません。私の意志は、私の脳を取り巻く環境に浮かび上がらせられているだけのものです。私の口から発せられるどんな言葉も、私のどんな行動もあなた方みなさんに作られています。私は今、あなた方に米大統領という生を生かされている喜びを感じます」 と宣言なさってください。
たった今のこの宣言も、自分の自発的な意志でも、独創でも、発案でもありませんが‥‥」 と付け加えることもお忘れなく。

その時、私たち人類に奇跡が起こります。
人類はつながります。一つの源泉に収束します。
私たちはあなた様が私たちの分身であったことに気づき、世界中の人類があなた様を誇りに思います。

同時に、あなた様とはまったく違う環境で育ってきてこんな僭越なる提案をする私のことを‥ご自分の分身である私のことを‥、あなた様はとても誇りに思ってくださることでしょう。
あなた様と私はつながります。一つの源泉に収束します。
あなた様は、私として生きるしかない今の私の悲しみと苦しみと喜びを察してくださることでしょう。
あなた様が、米大統領として生きるしかない悲しみと苦しみと喜びを生きておられるのと同様に。

大人と子供が
子供と大人が
英雄と犯罪者が
犯罪者と英雄が
太陽とモグラが
モグラと太陽が
つながります。
一つであった自分の本当の姿を知ることになります。
互いにとても誇りに思い、慈しみの気持ちが湧いてくるでしょう。
自分の分身として。
この世界から嫉妬や羨望や怒りや恨みを消せるのは、科学が導いてくださった分身主義だけです。

今、世界に奇跡を起こせるのは、
米大統領様、
自他共に認める最高の権力とやらを勝ち得たあなた様です!
どうか、あなた様ができる、あなた様だからこそできる最高の贈り物を、人類にお与えください!
世界を早く平和へとお導きください!
そして、この宇宙のたくさんのあなた様の分身を信じて、ゆったりとその身を委ねて、防備を解いた心と体で、あなた様の本当の幸せを早く味わいください!


                                      謹白、


注:ここに書いた米大統領とは、特定の個人を差しているわけではありません。
(*3 DNAの説明は→こちら




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君は恋人


「あなたの体は癌に冒されています」
君はその宣告の言葉と共に
僕の中に居座りましたね

ちょっと神妙な顔をして
人の顔色をうかがいながら
申し訳なさそうに
それでいてちょっと威張った感じで

でも僕は
ずっと前から君を待っていたのです
僕が完全無欠の分身主義者になるためには
君の力が必要だった(*4)からです

さあ僕に百万の苦しみをお与えください!
さあ僕に百、いや十の痛みをお与えください!

僕に
君が苦しめるすべての人々の苦しみを
実感させてください
君や君を生んだこの宇宙のことを
体感させてください

すべての人々とつながるために
すべての人の恨みを消すために
君と共に生きる喜びのために

君は僕に本当の喜びを与えてくれるために
僕を訪ねてきてくれたんですね
君を‥‥
ずっと前から君を
待っていました
君は僕の恋人
愛すべき僕の分身

(*4 僕が癌になりたい理由は→こちら




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新しい日常


恐がらないでください
つなぎ替えるだけですから

もっとしっかりした場所に

嵐がきても
津波がきても
決して流されず
爽やかなシャワーを浴びているような
たっぷりの羽毛の入った布団の上を跳ねているような
明るく笑い飛ばせてしまうような
しっかりした場所に
つなぎ替えるだけですから

僕たちはもっとしっかりと守られています
心配しないで!
恐がらないで!
受け入れて!
新しい視点が上書きされた
新しい日常を



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これからの話をしませんか?


もう僕たちはこれからの話をしましょう

同じ個所を
行ったり来たりする
傷だらけのレコードは
大切に押入れの奥にしまい込んで

今までの人間中心の
感傷的な記憶の痕跡はみんな
明るい光の元で種明かしして
もう僕たちはこれからの話をしましょう


子どもも大人も
老人もおんなも
開拓民も先住民も
奴隷も地主も
官僚も羊飼いも
キリストも仏陀も
マホメットも魔法使いも
王侯貴族も浮浪者も
乞食も大富豪も
大統領も賤民も
小間使いも映画俳優も

みんな素粒子の演じさせられている役者
みんな僕たちの分身

そして
被害者も加害者も
受刑者も死刑執行人も
賢者も愚者も
怠け者も努力家も

お調子者もつむじ曲がりも
迷信家も科学者も
甘ったれもしみったれも
見栄っ張りも出しゃ張りも

みんな自然法則で書かれているシナリオの
みんな僕たちの分身


僕たちは‥‥
共通の言葉を探しながら

もう僕たちは‥‥
これからの話をしましょう



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.

これってなあに !?


世界中の子どもから大人まで
誰もがいつも肌身離さず持ち歩いていて
しょっちゅうそれを取り出しては
何かを切ったりくっつけたりしているのに
どんなに使っても
決して壊れたり
さびたり
形が変わってしまったりしません
時々手を広げて眺めたりしているけれど
その人にしか見えません
他の人には見えないけれど
自分も手を広げれば
確かにそこにあります

これって、なあに!?

答えはこちらです。



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